どこかの屋内の様子が、映し出される。
そこは幾分広く、暗めの照明が印象的な、ホテルの一室のような空間だった。

【灯夜】「って、ここは……ラブホテル……?」

僕自身、そこに入ったことなんてない。
けど、雑誌なんかで見た知識と、その内装は一致していた。

【さとみ】「ひぐぅぅぅうぅうっ! うぁ、あっあっあっあっあぁああああああッ!」
【灯夜】「……え……?」

一瞬、目を疑った。
それもそのはずだ。さとみがお尻をこっちに向け、身悶えしているところなんて、
想像の域を超えている。

【男】「はは、すぐ果ててはいけないよ。今日は他に、するべきことがあったじゃないか」
【さとみ】「ふぇ……? やることって、なんだっけ……気持ちよすぎて、私、忘れてる……」
【男】「『本当のお兄ちゃんに、電話をかけてみよう』じゃなかったかな?」

脳内の記憶が、津波のように押し寄せる。
さとみの携帯から、僕に電話がかかってきたことは、この一週間で一度だけ。

【さとみ】「あ、あは……そうでした、私の様子、お兄ちゃんに報告するんでした」
【さとみ】「でも、ちょっと恥ずかしいかも……喘ぎ声も、お兄ちゃんに聞かれちゃうんですよね」


僕が願うのは、ただ一つ。
今から聞こえるさとみの台詞が、明らかに様子が変だったあの時のものと同じじゃないこと。
それだけを、祈り続けた─。
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