【梨緒】「……いいの。灯夜は何もしなくて」
ぼそりと、梨緒がつぶやく。
何も、しなくていい? なら僕は、梨緒が何かをするまで待っていれば……。
【梨緒】「うぅぅっ、もーダメ! やっぱこーゆーの、あたしの性分じゃないっ!」
【梨緒】「ん……っむ……!」
【灯夜】「っ? 〜〜〜〜〜〜ッ!?」
……そう。僕はいつも通り受け身で、待っていたんだ。
ただ、彼女の行動は、僕の想定していたものを、那由多とか無量大数の桁で上回っていた。
【梨緒】「ちゅ……ん、ちゅく……んふ、ふぅ、んむぅ……」
梨緒の息遣い。梨緒の温もり。梨緒のくぐもった声。
そして、柔らかくてほんのり甘い、梨緒の唇の味。
夢なら、醒めないで欲しい。ううん、夢であって欲しくない。
こうして僕らは、晴れて交際することになった。
周りに秘密にしなければいけない分、あけっぴろげにいちゃいちゃする、
という訳にはいかなかったけど。
……それでも、僕はこの時、幸せだった。
……幸せだったんだ。 |
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